4月13日から15日にかけて、北海道・道南エリアで温泉をたっぷり楽しむ旅に出かけました。その様子をご紹介します。今回は行きは新幹線、帰りは飛行機を利用しました。
旅のプランは以下の通りです。
4月13日は八雲町にある「銀婚湯」に宿泊。翌14日は函館へ移動し、「谷地頭温泉」に立ち寄ったあと、「ラビスタ函館ベイ」に宿泊し、館内の「海峡の湯」で癒やされました。夕食には、近くの海鮮料理店「海寿」で北海道の海の幸を堪能。最終日の15日は、函館・元町エリアを散策した後、函館市電に乗車して「湯の川温泉」で旅の締めくくりをしました。まさに温泉三昧の贅沢な旅です。
4月13日、大宮駅を午前8時42分に出発する「はやぶさ5号」に乗車し、12時15分に新函館北斗駅に到着しました。この列車は仙台、盛岡、新青森の3駅のみに停車し、所要時間はわずか3時間33分という、最速の新幹線です。
新函館北斗駅から銀婚湯の最寄り駅である、函館本線の普通列車のみ停車する落部(おとしべ)駅に向かいます。12時42分発の函館本線・普通列車(函館行き)に乗り、まずは七飯駅へ向かいます。続いて、七飯駅12時57分発の長万部行き普通列車に乗り換えます。
ただ、少し残念だったのは、3月のダイヤ改正でレトロな雰囲気が魅力のキハ40系気動車が姿を消し、キハ150系に置き換えられていたことです。出力に関しても、キハ40系が220PSだったのに対し、キハ150系は450PSと倍以上の性能になっており、その走行感は特急北斗のような快適さを感じさせます。それでもやはり、個人的には味のあるキハ40系が好きでした。
この普通列車は「藤城支線」という路線を走っており、もともとは貨物列車用の線路ですが、旅客列車も1日3本だけ運行されています。七飯駅と大沼駅の間を結んでおり、途中の新函館北斗駅と仁山駅には停車しないため、七飯駅から乗車する必要があるのです。
他のルートとしては、特急「北斗11号」を利用する方法もあります。新函館北斗駅を12時34分に出発し、13時1分に森駅に到着。その後、13時50分発の長万部行き普通列車に乗り換えて落部駅へ向かうルートです。ただし、落部駅は普通列車しか停車しないため、待ち時間が49分ほど発生します。また、運賃は普通列車のみのルートなら1,650円で済みますが、特急を利用すると2,370円かかってしまいます。
こうした点を考慮し、コストパフォーマンスの高い七飯駅経由のルートを選びました。こちらが、その際に新函館北斗駅のみどりの窓口で購入した乗車券です。
新新函館北斗駅で購入した駅弁を味わいながら落部駅へと向かいます。
車窓からの景色は素晴らしく、大沼沿いを走った後には、雄大な北海道駒ヶ岳の姿が目に飛び込んできます。あいにくの天候ではありましたが、何とかその姿を確認することができました。
列車は森駅に停車します。特急も停まる広々とした駅ですが、どこか物寂しい雰囲気が漂っています。
森駅から2つ目の落部(おとしべ)駅には、14時4分に到着しました。落部駅は、非常にローカルかつレトロな雰囲気の駅で、まるで時代をさかのぼったかのような錯覚を覚えるほどです。無論乗降客は自分のみです。
宿泊先である「銀婚湯」では、宿泊者向けに駅までの送迎サービスがあり、それを利用させていただきました。
14時30分頃、銀婚湯に到着。落部川沿いに位置する上の湯温泉にあるこの宿は、数百年前からアイヌの人々にも親しまれてきたという、歴史ある温泉宿です。建物は木造の純和風で、客室はすべて和室。1泊2食付きで1名利用の場合、トイレ付きの部屋が19,510円、トイレ無しが14,670円とリーズナブルな価格設定になっており、今回は迷わずトイレ無しの部屋を選びました。なお、チェックインは13:00、チェックアウトは11:00と、ゆったりとしたスケジュールも魅力です。
宿泊したのは質素な6畳間ですが、広縁にはテーブルと椅子があり、PC作業も可能な環境です。事前情報では「Wi-Fiなし」との口コミも見られましたが、実際には電波は弱いながらも無料Wi-Fiを利用することができました。
日本秘湯を守る会に所属するこの宿の最大の魅力は、「隠し湯」と呼ばれる野天風呂が広大な敷地内に5ヶ所点在している点です。利用するにはフロントでそれぞれの鍵を借り、1時間以内の時間制で入浴します。ただし、「隠し湯」目当ての宿泊客が多いため、希望する湯が空いていない場合は予約をして部屋で順番を待つことになります。
「隠し湯」には洗い場がないため、まずは宿自慢の大浴場で体を洗ってから向かうのが基本です。今回は幸いにも「どんぐりの湯」が空いていたため、すぐに鍵を借りて向かうことができました。
途中、落部川にかかる迫力満点の吊橋を渡ります。この吊橋は非常によく揺れるため、足腰に不安のある方や、飲酒後の渡橋は控えたほうがよいでしょう。
道中には道標が設置されており、行き先をしっかりと案内してくれます。ただ、北海道の4月はまだ緑が少なく、やや寂しげな風景が広がっています。
やがて「どんぐりの湯」に到着しました。まさに“隠れ湯”と呼ぶにふさわしい佇まいです。
脱衣所は温もりのある木造りで、素朴な雰囲気が漂っています。
湯は本当に素晴らしく、落部川のほとりに静かに湧き出しており、聞こえるのは濁流の音のみ。まるで日常から切り離された別世界にいるような感覚になります。もちろん源泉かけ流しで、泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。塩味を感じる湯で、油のような匂いが漂っていました。
「どんぐりの湯」をあとにし、フロントで鍵を返却してから、次に利用できる野天風呂を確認すると、なんと銀婚湯で最も人気のある「トチニの湯」が空いているとのこと。早速そちらへ向かうことにしました。「トチニの湯」は宿から最も離れた場所にあり、歩いて約10分ほどかかります。途中までは先ほど訪れた「どんぐりの湯」と同じルートで、吊橋を渡ったあと左方向に進みます。
やがて「トチニの湯」に到着。こちらもまさに“隠れ湯”の名にふさわしい、ひっそりとした風情のある温泉です。
浴室の扉には内側からしっかりと鍵をかけることができ、プライベートな空間が保たれます。
脱衣所も、やはり木のぬくもりが感じられる造りで、時間制のため設置されている時計がとても助かります。
湯船は自然木をくり抜いて造られた丸太風呂で、湯に身を沈めるとまるで夢を見ているかのような心地に包まれます。この「トチニの湯」は、銀婚湯の中でも最も温泉濃度が高いとされる名湯です。
さらに奥にはもう一つの湯船があり、「奥の湯 トチニの湯」と呼ばれています。こちらも木製の浴槽です。
「トチニの湯」を後にしてフロントで鍵を返却し、次に利用できる野天風呂を確認すると、30分後に「かつらの湯」が空くとのことだったので、部屋で待機していました。しばらくして内線コールがあり、いよいよ「かつらの湯」へと向かいます。
「かつらの湯」は吊橋の手前を曲がってすぐの場所にあり、外観はまるで子供の頃に作った「秘密基地」のような雰囲気。木の階段を登って中へ入ります。
湯船は、なんと35トンもある巨石をくり抜いて作られたもの。
脱衣所もまた、桂の木をくり抜いて造られており、自然の中での贅沢なひとときを味わえます。
チェックインの時間が早いと、こうして複数の「隠し湯」を楽しめるのですね。「かつらの湯」を満喫したあとは部屋に戻り、サッポロクラシック(北海道限定バージョン)で喉を潤しました。18時30分からは夕食の時間です。食事は半個室のような落ち着いた空間でいただきます。
お酒は札幌の地酒「丹頂鶴」の冷酒を注文。お品書きの数も豊富です。
エビ2本とカボチャ・ピーマンの天ぷら。柚子塩を添えていただくと、とても美味でした。
メインディッシュは鶏鍋。地元産の卵にくぐらせて食べるスタイルで、こちらも絶品。ごちそうさまでした。
食後は部屋で軽く飲み直し、なんと21時頃には眠ってしまいました。
翌朝は7時前に起床し、宿自慢の大浴場へ。大浴場は朝と夜で男女が入れ替わるため、前日とは違う温泉を楽しめます。
8時頃には豪華な朝食をいただきました。焼き魚がとても美味しく、思わずご飯をおかわり。
チェックアウトは9時頃。帰りも落部駅まで送迎してもらえます。落部駅は上下合わせて1日6本しか列車がないため、乗り遅れは絶対に避けたいところ。9時58分発の函館行きに乗るため、9時30分頃には宿を出発しました。宿のご主人が最後に見送りのご挨拶をしてくださり、温かい気持ちで銀婚湯を後にします。今回5つの「隠し湯」の内入ったのは3つです。残りの2つの「隠し湯」は次回のお楽しみにさせていただきました。また、この旅館には結構カメムシがいます。虫の嫌いな人にとってデメリットです。部屋にガムテープが置いてあり貼り付けてゴミ箱に捨てるのだそうです。
この後は、北海道・道南の温泉を満喫する旅(函館 ラビスタ函館ベイ 湯の川温泉へと)に続きます。